氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 となると、もしラグビー部をやめるならはやく退部届けをだすべきだな。

「ネックになるのは練習時間の遅さと。経済的な問題……かな?」

 そういうことまで教えておかなきゃ、いくら興味があっても始められないわけで。

「部費に関しては、うちは恵まれている」
「え?」
「多額の活動資金をくれてる方がいるおかげで個人の負担が少なく済んでいる」
「そんな人が!?」

 安定して週2日の氷上練習を確保でき、練習に必要な道具が揃えられるのは――

「ナリさんがいるからだ」
「……成澤、が?」

 成澤って。

「何者なの。あの男」
「ひょっとして成澤先輩ってアイスホッケー部なんすか」
「あっ、おかえり。真柴くん」
「たっ……ただいまっす!」

 いちいち顔赤くしなくていい。

「知ってるの? 成澤のこと」
「もちろん顔と名前は一致します」

 真っ白なぞうきんを濡らしてきてくれたようだ。

 からぶき用のもある。

 すぐに黒くなるなこれ。

「と目立つもんね。女の子、はべらせてて」
「それもありますけど。なにせNARISAWAグループの御曹司っすから」

 ……おん?

「うちのじいちゃん、子会社で働いてたっす」
「え?」

 あのセクハラ大魔王、

「このあたりにもいっぱいありますよ。NARISAWA系列の店は」

 そんなに金持ちだったの……!?
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