氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
　やっぱりそうか。

「自分の持ってないって言ってたのに」
「ならば購入したのでしょう」

　成澤が家まで迎えに行く前に、買いに走ったってこと？

　だとしたら凄い行動力。

「安くはないものなのに、いきなり買うのって……」

　まだ入部も決まっていないし、当麻氷河が弟のを貸すって話だったよね。

「賢明な判断だと思いますよ」
「え？」
「貸靴で100回練習するより。マイスケートで10回滑った方がみるみる上達するでしょう」

　――――！

「そんなに違いますか？」
「新しい靴を購入した際、足に馴染むまで時間がかかります。自分の足に合ったクセがつくんです。貸靴を利用すると毎回新しい靴を履くような―いいや、毎回他人のクセがついたものを使うことになるのです。しっくり馴染むことは、まあ、ないでしょう」

　そうだったんだ。

「じゃあ……試合の直前に新しい靴をおろさない方がいいですね」

　あと、サイズがたとえ同じでも人に靴を貸すのは絶対にやめた方がよさそう。

　ミリ単位で狂ってもプレイに影響する可能性ありそうだな。
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