氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「初心者向けでないアイスホッケー靴には、新品の段階で足にフィットさせてしまう技術を施すことができるものがあります。そうすることで、2~3週間履き慣らしたような感覚がその日から実現できストレスがなくなるわけですが」
「そんなのどうやってやるんです?」
「オーブンフィッティング――あたためるのです。熱でやわらかくした靴を履き、冷めるまで待つと足の形に馴染みます」

 そんな画期的なことができるのか。

 専門のお店でするの?

「着実に上手くなるために、彼はいちはやく自分のスケートを買うことを選んだのでしょう」
「……判断力。ありますね」

 それに本気で始めようとしてる意志が伝わってくる。

「果たして誰かが知恵をあげたのか。自分でそこまで考えついたのか。彼、アイスホッケーのことはどの程度知っているのですか?」
「今日までどんなスポーツかも、ほとんど知らなかったと言ってました」
「それはそれは。熱心なようで。転んでも起き上がってますね」

 初めてのスケートを防具ありで使いこなすってなると動きにくいはず。

 真柴くんを熱くさせるのは、スポーツを始めたいという意欲。

 それを引き出したのは――当麻氷河だ。
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