氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 たとえ圧倒的な経験値の差があっても、

「転ばないようになってきたじやないですか。転ぶまいと慎重になりすぎなかったことで、バランスをつかめたのでしょう。それにしても……初心者の割には不恰好ではない」

 埋めようと努力している。

 そんな真柴くんを見て――いいや、この場にいる誰を見ても感じることがある。

 どうしてそこまで頑張れるの?

「真柴くん、体操が得意だそうです」
「なるほど。腑に落ちました」

 ポケットの中で携帯が震える。

【テスト、お疲れさま】

 白鳥さんから連絡が入った。

 夜に時間がとれる日があったら教えてと言っておいたからメッセージくれたんだ。

【今夜、お店閉めたあと時間とれるけど】

 ドライブデートって言ってたくらいだ。

 車あるんだろう。

 ならば、終電とか関係なく動けるはず。

「フジオ先生」
「はい」
「ここに学校の関係者以外を呼ぶのって、ありですか」
「観客席ならかまいませんよ。見学したいという人が?」
「すごくいい写真を撮る人がいるんです!」
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