氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。


 ◇


「夏のスケート場。さぞ快適かと思いきや、凍えるなあ」
「突然お呼び立てしてすみません」

 白鳥さんは、長袖のジャケットを羽織っている。

 それでも寒そうだ。

 わかる、その気持ち。

 わたしも初めて来たときこんなに寒いと思わなかった。

「おお。やってるねー」

 パックをスティックで運ぶ音。

 パックが壁に当たる音。

 スケートで氷が削れる音。

 ここにいると、目からだけでなく耳からも次々に情報が入ってくる。

 それが、妙に心地よかったりする。

「生で見るのは初めて」
「ってことは……テレビで見たことあるんですか?」
「前にニュースでチラッとね」

 ……ニュース?

「実業団のチームが廃部決まって。ファンや関係者が寄付金集めてたとこが取り上げられてた」

 そんなことがあったんだ。

「結局どうなったんですか」

 明日は我が身というか。

 廃部って言葉を聞くと他人事と思えない。

「新チームができたよ。拠点も変わらなかったから、地元の人は喜んでたね」

 多くの人たちから愛され、支えられているのだな。

「バスケットボールのチームまで寄付金を集めていたらしい」

 スポーツの垣根を越えたドラマがそこにあったのか。
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