氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 白鳥さんは、鞄からカメラを取り出した。

 高そうだな。いくらするんだろう。

「誰か撮って欲しい人いる?」
「え……いや、全体的に。キラリと光る瞬間を」
「一番難しい注文きたね」

 そう言いながら、レンズをセットしている。

「すみません」
「いや、大丈夫。一番面白い注文だからそれ」
「え?」
「先に言っておくけど。僕は僕がいいと思ったものしか撮らないよ」

 上等だ。

 白鳥さんがいいと思った瞬間をおさめてもらえる。

「1枚もシャッター切らずにデート終わったらごめんね?」
「そんなことにはなりません」

 デートでもありません。
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