氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 そう言ったとき、

「それは無理なお願いだな」

 そいつは視界に入ってきやがった。

「……出た」
「エリナちゃん、これから体育?」

 両手に女子をはべらせて歩いている成澤。

 見た目は悪くないが中身はカオスなこの男にファンがつくなんて世も末か。

「かわいーね。うちのダサいジャージも君が着たら萌えるよ。写真撮っていい?」
「気持ち悪いです」
「あ、氷河」
「え?」

 思わず成澤の目線を追うと、そこには誰もいない。

「うそピョン」

 クッソ……!!

「ほんと大好きなんだねー? 氷河が」
「ちがうって言ってるでしょ」
「一緒にガッコ来たってほんと?」

 どこまで噂、広がってるの。

「っていうか先輩。嘘つきましたよね」
「んー?」
「だから。……アイツが一途とか。ずっと好きな子いるとか」
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