氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 ただのヘンタイではないけど、

「成澤」
「んー?」
「トイレ貸して」
「えー。エリナちゃん。トイレでしたいの?」
「は?」
「そういうので興奮しちゃう子?」
「あんたねえ!」
「はは。案内するよ」

 ヘンタイには違いないということで。

 立ち上がると、成澤は

「俺ら以外のメンバーも同じ意見だと思うよ」

 真柴くんにそう声をかけた。

「……ほんとですか?」
「君の熱心さなら他のやつらもわかってる。滑ってるんだろ? 氷上練習ない日も、一般滑走で。偉い偉い」
「なっ……なんでそのこと。見てたんすか?」
「やっぱりそうか」

 カマかけたな。

 確信がないことを、さぞわかったフリして話した。

「じゃなきゃそんなに上達しないでしょ。それに。はやくもカラダ引き締まってきてるよね」
「……っ」
「期待してるよ」

 本当にこの男は、見るべきところを見ているなと感心せずにはいられない。

「うす!」

 加えて飴と鞭の使い方が上手いというか。
 褒めて伸ばす力もあるらしい。
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