氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 どれだけ読み込めば、そんなことできるのか。

 一度、目を通せばそうなると?

「纐纈さんは。どう思いますか」
「え?」
「自分がゴールテンダーやること」

 背中、押して欲しいのかな。

「そうだな。わたしは、真柴くんがやりたいことやるのが一番だと思う」
「ほんとっすか?」
「うん。それにゴールテンダー1人しかいないから。救世主あらわるって感じ?」
「いやいや。そんな」

 照れてる。かわいい。

「真柴くん努力家だし。別メニューってのも……詳しくないけどコツコツ頑張ってくれそうだよね」
「エリナちゃん。褒め殺し~」
「え?」

 真柴くんが耳まで赤くなっている。

 言い過ぎた。

 でも別に今のは自然と口から出た言葉であって、お世辞でもなんでもないからな?

「……纐纈さん」
「ん?」
「俺。今度は逃げないっす」

 ラグビー部を辞めたこと、言ってるんだ。

「うん。一緒にがんばろ」
「……っ、ハイ!」

 元気よく返事すると、

「自分もトイレ借ります!」

 逃げるように去っていった真柴くん。

 仔犬みたいだな。

 藍さんと成澤が呼んでるマメシバくん、案外しっくりくるかも。
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