氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「場所わかるかな。案内しなくていいの?」
「彼なら野生の勘で辿り着くんじゃない」
「野生……というよりは。飼い犬」
「大切に育てられたんだろうね。彼」

 わかる。

 おばあちゃんっ子みたいだけど、愛情たっぷり注がれてそうというか。

「真っ白すぎてビックリするよ。ほんと」
「……成澤」

 あんただって、大切に育てられたんじゃないの?

 こんな立派な家で、不自由なく、好きなこともさせてもらえている。

 だけど。

「さーて。あのチェリーくんを何色に染めてやろうか」
「ヘンなこと教えないでよ?」

 この家は、あまりにも広すぎる。

 リビングだけで一体何畳あるのか。

「ヘンなことって――どんなこと?」
「わかってるクセに」
「となりおいでよ」

 ここあいてるよ、とソファをポンポンする成澤。

 真柴くんが戻ってきたら間に座ってもらえるだけのスペースをあけ、成澤から少し離れて座った。

 当麻氷河は休憩しないのかな。
 さすがはストイック。

「うちにエリナちゃんがいるって新鮮だな」
「いつもは日替わりで違う女の子がいるんだよね」
「まさか」
「ちがうの?」
「呼ばないよ。うちには」
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