氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 成澤でも実家に女を連れ込みまくるのはタブーなのかな。

 まあこの家なら遊びに来る方も気軽に来れないな。

 どんな手土産用意すればいいかわかんないもん。

 ……手ぶらで来てよかったのだろうか。

「女の子の家にあんたが上がり込むわけだ」
「正解」
「向こうの親、なんにも言わないの?」
「いないよ。たいていは」
「……そうなんだ」
「いたら声おさえなきゃいけないんだよね」
「そこまで聞いてない」

 冗談っぽく、とんでもなく軽く話すけど。

 ……してるんだよね。ほんとに。

 経験豊富なんだよね、こいつ。

 一つしか違わないのに。

「ひょっとして。怖いの?」

 …………!

「あー、大丈夫。ここで小声で話す分には。氷河の耳には入らないよ」
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