氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 たしかにソファとテーブルは離れている。

「男はさ。ただ満たされて終わるだけだけど、エリナちゃんは女の子だもんね。初めては色々と不安になるよねー」

 でも、同じ空間にアイツがいるのに、こんな話……。

「きっと大丈夫」
「え?」
「人によっては自分だけ気持ちよければいいって乱暴に女の子を扱うやつもいるだろう。氷河は違うでしょ」

 うん。

 アイツは、そんな男じゃない。

「えーと。気持ち込めたキスは最高、だっけ?」
「……っ、もう忘れていいよ」

 我ながら恥ずかしいこと言ったな。

「ムリムリ。俺は一度でも見聞きしたことは死ぬまで忘れられない脳ミソしてるから」
「ほんとに?」
「ほんとさ。一字一句間違えずに言えるよ。君の名言」
「い、いわなくていいし」
「響いたなあ。あの台詞。いや、(えぐ)られた」
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