氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。


 ◇


「じゃあ、また練習でね」
「お疲れさまっす!」

 成澤の家からの帰り。

 真柴くんと別れて当麻氷河と駅のホームに立つ。

「課題、ほとんど終わったね」

 まさか夏休み序盤にここまで済ませられるとは。

 あとから焦る必要がなくなった。

「あと厄介そうなのは、英語での読書感想文か。まあ。ちょーっと大変だけど当麻氷河いるし!」
「自分の力でなんとかしろ」
「デスヨネ」

 バイリンガル羨ましい。

「広かったねー。成澤の家」
「ナリさんのことだけど」

 …………!

「本気には。本気で返すべきだと思う」

 わかってる。

「あの人は。すごく。魅力的だ」

 知ってる。

「俺は、全力で引き留める。……でも、選ぶのはお前だ」
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