氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「もうかわいた。男の子はラクでいいね」
「だったらお前もショートにしたら」
「んー。いっかいしてみたいとは思うんだけど勇気でないかな」

 ずっとセミロングで、ここまでのロングは初めてだから切るの勿体ないし。

「さっぱりしていいんじゃね」

 うう。

 そんなこと言われたらあっさりハサミを入れちゃえそうな自分がいる。

「普通に似合うだろうし」

 当麻氷河。

 あんたは、その一言がどれだけわたしに影響与えるか考慮して発言するべき。

 狙わずに素で言っちゃうのが非常にズルいんだ。

 スイッチを切ったドライヤーをわたしから奪い床に置くと、手をつかんで立ち上がらされる。

 いよいよ。

 わたし――

「カッコ悪いの承知で最初に言っとくと」

 ……?

「すげえ緊張してる」
「え?」
「試合のときより。ずっと」 
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