氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 それからアイツはわたしを

 割れ物のように丁寧に扱ってくれた。

 優しくほぐしてくれた。

 そんなアイツにすべてを捧げたいと、

 ひとつになりたいと思った。

 でも

『――ごめん。氷河くん』

 ……最後まで、できなかった。


『いいよ。大丈夫』

 強引なことはせず、アイツはわたしの心の状態やカラダの負担を一番に考えてくれた。

 そっと抱き締めてくれた。

 一階の冷蔵庫から持ってきたペットボトルに入った水を飲んでいるアイツを、裸のまま布団にくるまって眺める。

「ひとくちちょうだい」

 近づいてきて、ペットボトルを手渡される。

 それに口をつけたとき

「間接キス」

 と言われ、ふきだしそうになった。
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