氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 部屋全体が音楽と青黒い明かりに包まれる。

 氷河くんが流したのは、初めて聴く洋楽だった。

 いつも聞いていそうなラップではなくて、ジャンルはわからないけど雰囲気のいい曲だ。

 こういうのスマートにかけられるとこもズルい、なんて思っていると――

「……ん」

 服の中に氷河くんの手が入ってくる。

 ゾクゾクする。

 はやく触れて欲しい気持ちと、すごく恥ずかしいという気持ちが入り交じる。

「我慢は?」
「~~っ!!」

 しまった。

 声だすつもりなかったのに、漏れてた。

「よわ」
「だってぇ……」
「脱がすよ。汚れる前に」

 音を立てないように静かに行為を続ける。

 リップ音や微かにベッドのきしむ音ですら神経を使うし、いつもより大きく感じる。

 わたしのカラダが氷河くんを受け入れる準備を始めてる。

 人間ってなんでこんな風に愛し合うんだろう。

 いや、人間だけじゃないか。

 難しく考え出すとキリがない。

 たしかなのは――大好きだから。

 氷河くんだから、ぜんぶ、受け入れたい。

「痛い?」
「いたくないよ」
「最初より慣れたな」
「うん」
「実はここ触られるの好きだろ」
「……なんでわかったの?」
「伝わってきた」

 誰も知らないわたしを氷河くんにだけ晒してる。
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