氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「どっちがいい?」

 見せられたのは、長方形の薄い箱。

 目を凝らさなくても見えるくらいには暗さに慣れてしまった。

 二つあって、一つには馴染みのあるキャラクターが。

 そしてもう一つには小数点の入った数字が書いてある。

「……くま」

 そうわたしが答えると、正方形のパッケージがいくつか連なったものを取り出す。

 ひとつ切りはずすと中から出てきたのは保健の教科書に載っていたアレ。

 ホンモノを見るのは初めて。

 望まない妊娠や感染症を防ぐために使用すると教わったもの。

 ちゃんと用意してくれたんだ。

 いつ、どこで……

 どんな顔して買ったの?

「違い……あるのかな」

 メーカー同じみたいだけど。

「まあ。好みじゃないか」
「へえ」

 わからなさすぎる。

 かわいい方でいいよ、うん。

「単純に。薄い方が体温、感じるだろうな」
「なるほど。体温が……」

 それって、つまり

 当麻氷河のぬくもりを……ってことだ。
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