氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 わたしから携帯を預かった成澤は、

「こういうことも。しない方がいい」
「え?」
「個人情報の宝庫だからね、スマホは」

 ニヤッと口角を上げた。

「そりゃ……そうだけど」
「親切に設定してあげるフリして入ってる写真コピーしたり怪しいアプリ入れたり、買い物しちゃったりできるんだから」

 便利なものだけにスマホの管理には気を付けなければならない。

 落としただけなのに……ってホラー作品もあったっけ。

 殺されかけるやつ。

「危機管理能力。足りてないんじゃなーい?」
「そんなことないし」
「俺のことは信用してくれてるってこと?」
「そりゃあ」
「さーて。それじゃあエリナちゃんが油断してるところで、氷河とのえっちな写真やムービーさがそっと」
「そんなの撮るか!!」
「んー、【撮るか】ってことは。【そんなのない】って全否定してなくて。部分否定で。つまりは」
「な……なに」

 理屈っぽいやつだな。

「やることはやってるんだ」

 と耳打ちしてきたのは、藍さん。

 固まっていると、

「氷河って。あの1年か」

 五十嵐さんが会話に入ってきた。

 ーーあの1年

「アイツと勝負がしたい」
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