氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
◇
「あんたのせいで単語テストがボロボロだった」
昼休み。
図書室の、昨日と同じ場所でアイツは課題に追われていた。
「人のせいにするな」
わかってる。こんなの八つ当たりだと。
「沙里と気まずいムードになった」
というよりは。
沙里が、気づいてしまうかもしれない。
本当のわたしに。
「ねえ。……わたしって素直じゃない?」
となりからイヤホンを奪い取ったら、今日もラップを聞いていることが判明。
「知らねえな」
「つめたい」
「俺がそんな人間だって知りながら近づいてくるお前って。つくづく」
「……なによ」
「暇人だな」
「またヒマジンって言った!」
ーーそういえば
なんでわたし、当麻氷河に会いに来たんだっけ。
3分、楽勝だな。
不思議なことに。
「小松さんは、多分」
「たぶん?」
「……いや」
なにそれ。
言いかけたなら最後まで言え。
「あのさ。氷河当麻」
相変わらずわたしでなくノートを見ているが、話には耳を傾けていて。
「知られたくない秘密に気づかれそうになったとして。あんたなら、どうする?」
目を見て話さないからこそ、こんな話ができちゃうのかもしれない。
「わからない」
「隠すか打ち明けるか迷うってこと?」
「いいや。単純に俺には隠したいものが、ない」