氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「髪。こっちの色の方が可愛いな」

 耳の下で二つに――編み込みを入れて結っている髪の片方をつかまれる。

 数日前、根本を染めるタイミングで暗めのトーンに全体染めした。

 それでも元が明るかったので、今日までにそこまでの暗さではなくなってしまったが。

「アイツの好み?」
「いや……どうなんでしょうね。気づいてもくれませんでしたから」

 ショートにチャレンジするか迷う。

 そこまで変化すれば気づいてもらえるだろうから。

「3本」
「……え?」
「アイツのシュート。3本連続で止められたら褒美くれよ」

 ――褒美?

「それって。成澤のバカがバスで言ってた……」

 ほっぺにキスですか!?

「成澤をバカ呼ばわりする威勢のいい女。藍川以外にいたんだな」
「えっ」
「断るか?」

 いやいやいや。

 スペシャルゲストさんの頼みを断るのプレッシャーです。

「えっと……」

 気のせいだろうか。

 男前な顔が、近づいてくるような。

「心配すんな。人の女に手を出す趣味はない」
「え!?」
「冗談だ」

 や、やられた!!
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