氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「イガラシさんって意外にイジワルですね」
「意外でもないだろ」
「いえいえ。優しいお兄さんなのに」
「俺が?」
「謎の包容力ありますから」
「そんなの言われたの初めてだな」
「そうなんですか?」

 部屋割りをみると、この部屋とフジオの部屋以外は複数人で使うことになっている。

 たとえばマネージャーは3人同室だし。

 五十嵐さんのVIP待遇は成澤からのプレゼントなのかな。

 わたしたちは成澤のおかげで格安でここを利用できている。

「残念だな」
「残念?」
「フリーなら。口説いてたのに」
「こ、今度は真に受けませんよ?」

 わたしがビックリしたら面白いんですよね。

「これはホント」

 ……え!?

 ほんと……ほんとって……んん?

「飽きねーな。依里奈は」

 ポンと頭を叩くとイガラシさんが部屋から出ていった。

 さりげなく呼び捨て。

 爽やかに頭ポン。

 しつこすぎず、胸キュンのツボをつく

 どこまでもスマートにイケメン……

「って、イガラシさん。部屋の鍵、渡し忘れてました!」

 追いかけて部屋から出たとき、

「あれあれー。どうして君が五十嵐くんのとこから出てくるの?」

 廊下で成澤と鉢合わせした。
< 385 / 617 >

この作品をシェア

pagetop