氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「やらしーの」

 全くやらしくない!

「浮気するなら俺って約束だったよね~」

 そんな約束した覚えはないし交わすこともない。

「どうして反論しないの? 図星?」
「ちがっ……」
「氷河には言わないであげるから。あとで俺の部屋にもおいで?」

 腰にまわされた手を全力で剥ぎ取る。

「あんた、ここで相当可愛がられてるみたいだな」

 クスリとイガラシさんが笑った。

 いい笑顔。

「聞いてよー、五十嵐くん。エリナちゃんたら君のこと見つめてたんだよ」

 は?

「カフェの窓から」
「あ……あれはバイクに乗ってるのカッコいいなって眺めてたの!」

 車体、すごく大きくて。

 あんなの乗りこなせるって凄いなと。

「乗せてやろうか」
「え?」
「怖くないなら」

 乗ってみたい気持ちもあるし、ちょっと怖そうとも思う。

「五十嵐くんが女の子乗せるなんてレアなんじゃない?」
「そんなこともねーよ」
「でも君がたくさんの女の子フッてるって話は耳にするよ」
「どっから出回るんだよ。そういうの」
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