氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「鍛えてるのかな」
「バリバリ鍛えてそうだよね~」
「でも。アイスホッケーから離れてるって……」
「うずいてるんでしょ」

 ――――!

「クロスアイスのとき、防具やスケートのメンテナンスが行き届いていた。きちんと保管していたんだよ、彼は」

 そうだよね。

 錆びたり埃かぶったり使えなくなっていないのは。

 棄てずにいたのは。

 なによりそれらを大切にしている、証拠。

「たしかにあんな男が目の前に現れたら掻き立てられるもの、あるよね。俺がどれだけ口説いても落ちてくれなかったのに。一瞬で惹き付けた」

 イガラシさんを動かしたのは、

「こうして合宿に来たのだって、ほぼ、氷河いるからで。またやりたいって気持ちもどこかにあるはずだよ」

 ――当麻氷河なの?

「イガラシさんがアイスホッケーやめたことと休学って関係ある?」
「知りたいなら本人から聞いてよ。話してくれないと思うけど。さっきの態度からもわかると思うけど、彼、プライベートに踏み込まれるの嫌うんだ」

 ――その話はいいだろ

「成澤は……」

 あの人にまたアイスホッケーを始めさせたくて呼んだの?

「なに?」
「イガラシさんのこと、好きなんだね」
「天才なんだ。うちに来たら間違いなく戦力になるし。敵にまわすと厄介極まりない」 
< 388 / 617 >

この作品をシェア

pagetop