氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「エリちゃんは。ナリに甘いよね」
「そうですか?」

 優しくしたことあっただろうか。

「甘やかしてもいいことないよ。仲間想いだけど、女の子に対しては救いようないクズだから」

 わたしもそう考えてしまった時期があったが――いいや救いようないとまでは思わなかったが、それにしても藍さんは成澤に厳しい。

「そういえば。お兄さんがいるんでしたよね」

 それも、この学校の卒業生で

 アイスホッケー部を作りたいと言い出した人。

 成澤のお兄さんがいなければ、自分はここにいなかった。

 成澤とも、そして当麻氷河とも知り合わなかった。

 こうして藍さんと天津さんと三人で料理をすることもなかった。

 そう考えると感慨深いものがある。

「藍さん、会ったことあります?」
「……あるよ」
「どんな人?」
「超素敵な男性。ナリとは比べ物にならないくらい」

 えーっと。

 それはつまり、女性にだらしなくないって解釈でいいでしょうか。
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