氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 こんな風に男子と話したの、久しぶりだな。

「海外に住んでたの?」
「ああ」
「どこ?」
「カナダ」
「英語ペラペラ?」
「それなりに」
「話して!」
「無理」

 高校生になって関わる男子といったら下心ありますって感じのヤツか、奴隷願望あるようなのだし。

 コイツといると腹が立つ。

 返事半分もしない、そっけなさで。

 口が悪くて。

 甘やかしてくれることを期待しても無駄だ。

 それでもどこか安心するのは、見え透いた嘘がないからなのかもしれない。

 それも、どこまでが本当なのかわかりやしないけど。

「そんなどうでもいい情報聞いて。どーすんの」
「えっ」
「こんな暇あるなら。単語ひとつでも覚えろよ」

 どうでもよくなんてない。

「……当麻氷河」

 どうでもよくなんてないよ。

「わたし。あんたとこうやって、くだらない話をするの。嫌いじゃないかも」
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