氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 2本目

 迷いなくスタートしたアイツは、

 今度はゴールテンダーの近くまで迫り、パックをすくい上げるように浮かせた。

 まるでアイツのカラダの一部かと思うくらい自由自在に操ってしまう。

 作り物の映像のようだがリアルなのだ。

 僅かな隙をつき、空いたスペースにそっと落とし込むようなシュートを決めた。

 なんとも軽やかにやってのけたわけだが、やはり、これもそう簡単に身につけたことではないだろう。

 日々の努力の積み重ねだろう。

 今わたしがこの目で見たものを文字にして書くと、長々とした説明のようなものになるはずだ。

 しかし、それは、ほんの一瞬の出来事

 ――紛れもなくコンマ一秒の世界だった。

「あの96番。1年や」

 ゴウさんの言葉に、

 こちらを舐めきっていた選手たちの開いた口がふさがらない様子だ。
< 455 / 617 >

この作品をシェア

pagetop