氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 たしかにアイツはカッコいい。

 惚れ直した。

 だけど、こうも思うんだ。

「成澤もイケてたよ」
「え?」
「あんたが手を抜かずに本気で立ち向かう姿、良かった」

 みんなそう思ってたと思う。

「もし、あのときの成澤をカッコ悪いと思うヤツいたらそいつがカッコ悪い」

 ほんとに惜しかったよね、2本目。

「わたし、入るって信じてたよ。でもパックは五十嵐さん手前にあって。悔しかった。悔しかったけど、嬉しい。2人が全力を出しきったこと」

 ――あと少し

「コンマ数秒の世界を。氷上から見るって、すさまじいんだろうね。本当に目まぐるしいんだろうね。やっぱりカッコいいなって、思った。アイスホッケー」

 あと少しで、成澤だって点を入れられていた。

 それ不可能じゃないと思った。

「素直に心の中で叫んだもんね。成澤先輩頑張れー! って」
「そこは。……声に出してよ」
「次からはそうする」

 声に出さなきゃ、想いは伝わらない。
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