氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「ようこそ。我がアイスホッケー部の集いへ」

 ……アイスホッケー?

「といっても。今日は練習ない日だから完全にプライベートな集まりだけどねえ」

 それは、初めて聞く単語だった。

「知らないよね。うちの高校、ただでさえ部活多いし」
「その中でもマイナースポーツだもんな」
「知り合いでもやってなきゃ聞くこともない」
「これを機に知ってもらえると嬉しいな」

 部活紹介のオリエンテーションには積極的に参加しなかった。

 自分はどこにも入るつもり、なくて。

「あの」

 わたしの声に、

「なんだい」

 成澤が反応する。

「アイスっていうくらいだから。寒い場所で活動を?」
「陸トレとかならどこでもできるよ。氷上練習はこのあたりだとスケート場まで行かないとできないね」
「このあたり……というのは」
「寒い地域では――冬、庭に練習場作ったり。湖にできたりする天然のリンクで遊べる」

 想像してみる。

 大自然の湖に氷が張って、スケートリンクのようになっている光景を。

 その上を優雅に滑るところを。

 よくわからないけどアナ雪みたいな世界?

 なんてファンタジー。

「……素敵」
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