氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 イガラシさんは、誰かを頼るのが苦手なんだ。

 ずっと頼られてきたから。

 一人でなんとかしてこようとしてきたから。

「成澤に受けた恩を3倍返しするつもりでチャレンジしてみたらどうですか」
「簡単に言ってくれるな」
「ご、ごめんなさい!」

 もう大人しく寝てます。はい。

「ありがと」

 ……え?

「だいぶ。気持ちがラクになった」
「ほんとに!?」
「シェアできたらいいのに」

 シェア?

 あ、練習動画のことかな。

「頼んでみましょうか。GWSムービーなら共有できると……」
「あんたのこと」

 ――え?

「当麻が独占してんの、ずりいわ」
「……っ」
「いい女」

 そう囁くと、イガラシさんは部屋から出ていった。
< 518 / 617 >

この作品をシェア

pagetop