氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 あいつのお弁当とは別に、机の上にお弁当が乗っている。

 わたしの分も持ってきてくれたんだ。

 ここで食べてるってことは様子を見に来てくれたんだよね。

 それが当麻氷河の意志か、藍さんか誰かに頼まれてきたのかわからないけど。

 素直に『ありがとう』って言えそうにない。

「……イガラシさんは。言ってくれるのに」

 助けが必要なら、なにしてても飛んでくる――って。

「なにを」
「別に」

 わかってる。

 アイスホッケーで頭がいっぱいなこと。

 だから、そんなあんたの重荷にはなりたくないのに。

 わたしの存在に救われてるって言われて嬉しかったのに。

 そうありたいのに。

「邪魔者の相手なんてするのは。時間の無駄でしょ」

 あー。

 こんな言い方、したくないのに。

「もう行ってよ」

 かわいくないな、わたし。

 最低だ。

 こんなんじゃ愛想尽かされる。
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