氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「なにキレてんの」

 ――え?

「キレたいのは俺の方だ。体調悪いから仕方ない……って思うようにしてみたけど」

 こっちに近づいてくるアイツ。

「まったく仕方なくないよな」

 デジャヴ――いいや、正夢か。

 とてもご機嫌ナナメなアイツがわたしに迫ってくる。

「いつまで五十嵐さんのベッドで寝てんの」

 ――怒らせた

「なにされても文句言えねーぞ。こんな状況」
「は?」
「気づいてんだろ。五十嵐さんがお前に興味あること」
「イガラシさんは、助けてくれただけで……」
「戻ってきたら添い寝してもらう?」

 顔が、近づいてくる。

「そんなわけないでしょ」

 もう少しで唇がぶつかっちゃいそうなくらい。

「あの人は。そこまで予定してるかもよ」
「考えすぎ」
「あの人の胸に倒れこんで。抱えられて。ここに寝かされた?」
「それは……不可抗力……」
「うっせ」
「……ふあっ」

 口の中に、アイツの指が入ってきた。
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