氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「油断なんて、」
「してる」
「……わたしは。氷河くんしか見てないのに」

 こんなに好きなのに。

「お前が俺を見てるとかいう以前の問題だ」
「なんでよ」
「じゃあ聞くが。俺が女の泊まってる部屋のベッドで寝てたら気分いいか」
「え?」
「五十嵐さんなら。百歩譲ってまだ藤さんの方がマシ」

 フジオの部屋で寝る方が危ないと思う。

「さっきみた夢の話、してもいい?」
「興味ねーな」

 聞いてよ。

「寝起きに、この部屋であんたにキスされた。それも強引に」

 なにか言ってよ。

「夢なのにすごくドキドキした」

 一緒にドキドキしてよ。

「思い出して、また今もドキドキしてる」

 わたしの頭の中。

 誰でいっぱいかわかったでしょ?

「お前。俺を練習に向かわせる気ないだろ」
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