氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「先生、お父さんみたい」

 いや、家族でも、なかなかここまで踏み込んだ話はしないか。

「まあ。君くらいの年の子供がいても不思議じゃない年ですからね」

 ……ん?

 もう、そんな年なの?

 年齢不詳すぎる。

「そうそう。合宿中は、しないで下さいよ」
「へ?」
「バレたら私が責任を問われるので」
「っ、やらないし……!」

 保身に走りやがった。

 そこは部の秩序の方を理由にしてくれ。

「ねえ。最近はスケートやってないの?」
「していないですね」
「しないの?」

 お弁当を食べ終わると、フジオが洗面台の前に立ち歯磨きを始めた。

 なんだろう。

 今、先生が関心あるのはお酒と煙草だけって気がしてきた。

 部屋に戻ってわたしも食事するかと考えたとき、テーブルの上に、あるものを見つけた。

「これ……なんだろう」

 メモに書き殴られていたのは、数字。

 そして名前。

 見覚えのある名字ばかり。

「みんな……うちの部員?」

 五十嵐、というのも。

「そこのケースとって下さい」
「わっ」

 背後から紙を取り上げられる。

 ケース?
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