氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「体調もうすっかりいいんでしょ」
「水着ないし」

 あっても入らないがな。

 なんでこんな時間にプールなんだよ。

 お風呂入って明日に備えて寝たい。

 洗濯機もまわしたい!

「もうすぐ試合だよ」
「ほんとにねー。だからこそ、息抜きしなきゃ」

 息抜きになるのか……?

 ファンの子にサービスして逆に大変なんじゃ。

 成澤なりに少しでも会場を盛り上げようとしてくれているんだよね。

「みんな際どい水着選んできてるから。目のやり場に困っちゃうなあ」

 うん、まあ、個人としてもすごく楽しんでるようで。

「でも」

 成澤の口元が、耳に近づいてくる。

「俺が興奮するのは。エリナちゃんだけだからね?」
「っ、しなくていい」
「そうやってジャージで隠されてる方が。最後まで脱がしたくなる」
「あっちいけ!」
「あー。わかった。俺と二人きりがよかったんでしょ。拗ねてるんだ?」
「……バカ」
「ちゃんと体力残しておくから。心配いらないよ」

 ほんと、心配して損した。
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