氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 天ちゃんにカツを入れられた真柴くんから、やる気がみなぎっている。

「あの。藍さん」
「んー?」
「ちょっと散歩してきていいですか」
「氷河と?」
「ち、ちがいます。友だちと」

 今アイツを休ませておかないと、いつ休んでくれるかわかりませんし。

 部活中にデートみたいなことも企んでませんから。

「オーケー」
「すぐ戻ります」
「ゆっくりでいいよ。応援にきてくれてるんでしょ」
「……はい」
「嬉しいね。わざわざこんなとこまで足を運んでくれるなんて」
「はい!」
「今朝、タイミング逃しちゃった。試合のとき、あたしからも挨拶させてもらうね」

 別荘を出て、ひとり、海岸にやってくる。

 砂浜を歩くわたしの足音に反応して顔をあげたのは、一人の男の子。

 彼の横顔を見て

 ドクン、と胸が大きく揺れる。
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