氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 へえ。そういうものなんだ。

「うちの部は、ここのリンクで氷上練習してる」
「夜遅くに?」
「んー。22とか23時くらいまでだね」
「……毎日?」
「さすがにそんなに使えない。部で安定して借りられるのは週に二、三日くらい」

 そっか。

 ここが使えないときは筋トレしたり走ったりしてるって感じなのかな。

 よくわかんないけど。

「氷上練習しない日に、氷上練習の動画をみてミーティングしたりするんだ」
「そのために藍さんたちが練習の様子をビデオで撮影するんですね」
「そうそう。失点シーンみて反省したり」

 滑る以外にも部員のやるべきことは盛りだくさんってわけか。

「あ。到達したみたいだね」

 成澤が視線を向けた先の扉から、見覚えのある人物が入ってきた。

「氷河、おそいよー」

 ――アイツだ。

「無理言わないで下さい。これでもバイトはや上がりしてダッシュで……」

 成澤からわたしに視線をうつした当麻氷河が、固まる。
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