氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 会釈をすると、剛さんが同じようにお辞儀してくれた。

 しかし無言。

 ……もう行ってていいかな?

 なんて考えていると、

「もっと客おるとこで試合したいわ」

 そういったのは剛さんの隣にいる男子だった。

 顎に髭が生えていて、短めにカットされている。

 剛さんくらい背が高く、2人並ぶとめちゃくちゃ目立つ。

 大学生みたいな高校生。

「ええなー。そっちは応援に来てくれる女の子いっぱいおって」

 ほぼ成澤目当てですけれども。

「いつもは観客それなりに多いんじゃないんですか?」

 今回の練習試合はともかく、普段の大会は。

「おらんおらん。時間も遅いし、会場のアクセスも、いいわけちゃうし。まあ寂しいもんやで」

 そうなの……?

「全国ベスト8いうても優勝したわけやないから誰も関心しめさん。校内で試合のビラ配ってても。冷たいもんやわ」

 そんな。

 歴史を塗り変えたのに。

「すごいことなのに。もっと注目されるべきです」
「嬉しいこと言うてくれるやん。実は俺らの隠れファン?」
「尊敬してます」
「来年はもっと上いくで」
< 588 / 617 >

この作品をシェア

pagetop