氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 ーーどういうこと?

「前からわたしのこと知ってたの?」
「ヒ・ミ・ツ」

 そこは言えよ。

 言い方もほんと気持ち悪いな。

「どうしてもって言うなら。チュウしてくれたら教えてあげる……って言いたいとこだけど。ファーストキスはまだ奪わないであげよう」

 まだってなんだよ、まだって。

「お代はハグで」
「迅速にお金で払います」

 って、こんな話。

 アイツに聞かれたら最低すぎるーー 

「……当麻氷河は?」
「あっち」

 見失ったアイツは、少し離れたところでスケート靴を履いていた。

 成澤も鞄から取り出す。

「そういう靴ってどこで買うの?」
「ショップもあるし。通販でも買える」
「そうなんだ。重そう」
「ガッチリしてるよね。耐久性あるだけに」
「成澤は、何年やってるの?」
「ナリ先輩って呼んで欲しいな」
「ナリサワセンパイ」
「いいよ。その飼い慣らせない感じが、新しくて」

 もうこの人と話すのやめようかな。

「俺はスケートそのものは4歳かな」
「そんな小さな頃から……?」
「育ったのが釧路だから」
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