氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 成澤からのパスを受け取ったアイツが――

「え……!?」

 ゴール裏に回り込んだ次の瞬間、

「なに。今の」

 すくいあげるようにスティックの先端――ブレードに乗せ、軽やかにゴールの中へと運び入れた。

「先生、あれは得点に……」
「入りますね」
「やった!!」

 同点に追い付いた。

 アイツが氷上、そしてベンチにいるチームメイトたちにグータッチしていく。

「ミラクルショットとも呼ばれるゴール裏からのシュートは、高度な技術を必要とするので滅多に見られるものではありませんが」

 それをアイツは、やってのけた。

「五十嵐くんに伝えたかったのかもしれません」

 みんなで戦っていること。

 1人で気負うなってこと。

「面白くなってきましたね」
「そうも言っていられません」
< 603 / 617 >

この作品をシェア

pagetop