氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。


 ◆



「エリナちゃーん。浴衣着てよ」
「着ません」
「せっかく用意したのに」

 試合で体力を使い果たしたチームメイトたちとやってきたのは、夜の海岸。

 急遽、花火をすることになった。

 多種多様な花火はもちろん

 バケツにライターといった準備万端すぎるセットが用意されているのをみて、これが突発的なものでなく計画的なものだと推測できる。

「みんな持った?」
「つけるよ~」

 どうやら成澤と藍さんによるものだということも。

 火が灯されると、オレンジの炎で辺りが照らされる。

「綺麗だね」

 真柴くんから反応がない。

「……大丈夫?」
「悔しいっす」

 わたしたちは、負けた。

 試合は3対1で相手チームが勝利をつかんだ。

 どれだけ成澤やアイツの個人スキルが高くとも、チームとして未熟すぎたのだ。

 イガラシさんの貢献は本当に大きかった。
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