氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「考えてるよ」

 と言ったのは、

「……成澤」

 本人だった。

 振り返ったらそこに座っているではないか。

 いつからいたんだよ。

「バレちゃったかー。俺の口から言うつもりだったのになあ」
「話すならはやい方がいいっすよ」
「それはそうなんだけどさ、氷河。あんまり俺の中身バラさないで?」
「少しは晒しておかないと。纐纈さんわりとガチでナリさんのこと引いてます」

 うん。

「うちの部は練習時間が遅い。それに体感してもらった通り、寒い。それでも耐えられる子にしか頼めないんだよね」
「それで、わたし?」

 昨日は対策できてなかったけど。

 あの寒さでも、手袋とカイロと、それからロングコートとブーツでもあれば長時間耐えられる自信はある。

「君はね。一番大切なものを持ってる」
「……大切なもの」

 わたしが、なにを持っているんだろう。

 進路希望調査の第三希望ですら埋められない落ちこぼれの、わたしが。

「純粋にアイスホッケーのこと【すき】っていう気持ちさ」

 …………!!

「少なくとも今の部員はそれがあるからこそ、続けてる。たとえマイナーで、練習時間も場所も限られてでいて金のかかるスポーツだとしても、【アイスホッケーが楽しい】と素直に感じるからそこにいる」
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