氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 声をかけてきたのは、野田だった。

「なに」
「井上先生から伝言あずかってて」

 げ。

「放課後、準備室に来るようにって」

 ……それ。

 無視していいかな?

「行ってらっしゃい」

 わたしを置いて帰ろうとする、沙里。

「そんなあ」

 まあ、バイトなら仕方ないけど。

「……だる」

 思い足取りで、準備室に向かう。

 職員室に呼びつけられたわけでも教室に残るように言われたわけでもないのが、ヤバい。

 進路希望の紙を書き終わるまで帰さないという圧を既に感じまくりだ。

「失礼しまーす」

 ノックをして、準備室に入る。

 はやく帰れますように。
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