あなたの隣にいてもいいですか
「大雅ね、会社辞めて、留学するんだって。」

「え?」

昨日も大雅君とは話したけど、何も言ってなかった・・・

「そこまでして、私と別れたいってこと。私が絶対に別れない、ずっとそばにいる、会える時だけでいいから会いたいって言い続けてるから。大雅も、同じ会社にいる限り、私とは離れられないって思ったんだろうね。すぐに転職も考えたみたいなんだけど前々から留学はしたいと思っていたらしくってさ、一年間、イギリスに行ってくるって。」

確かに、りえとどうやって別れるか考えてみる、と言っていた。それが、これなのか。私も、大雅君に、会えなくなる、ということか・・・ショックで、口がきけなかった。でも、ここで私が傷つくのは筋違いだ。大雅君の彼女は、りえちゃんだ。

「いつ、から?」

「半年後。
 それまでは、今までどおり付き合ってくれるって言ってくれた。まわりにも別れたことは言わないでいてくれるって。大雅が留学するときに、ちゃんと別れるよ」

そうなんだ。
じゃあ、留学するまでの半年間はりえちゃんは彼女なんだ。私と二人であうことは、できないだろう。

最近は、ずっと大雅君と一緒だった。りえちゃんの存在も、気にはないつつ、大雅君と一緒にいることが何よりも楽しくて、当たり前になっていた。少し前に再会した牧田さんのことも、もちろん航生さんのことも全く思い出さなくなるくらい、いつも大雅君のことを考えていた。

その大雅君が半年後、留学してしまう。そして、留学するまでの間は、りえちゃんが側にいる。
もう会えないんだ、と思うと、胸が潰れそうだった。

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