あなたの隣にいてもいいですか
待合せのお店に行くと久しぶりに会う絢ちゃんは、少しほっそりとしていて、大人な雰囲気になっていた。絢ちゃんは、大雅君とりえちゃんが付き合っているところまでしか知らず別れたことは言っていないらしい。今日もそれは言うつもりがないみたいだ。絢ちゃんは、もう叶うことはないとはいえ、やっぱり大雅君のことは好きなのだろう。言動ににじみ出ている。しかし、大雅君は上手く躱し、私に向って話題を多く振っていた。

絢ちゃんが化粧室に行くため席を立つと大雅君がテーブルをトンっと叩いて、手を置いた。とんと目で返事をすると、今度は手のひらを上に向けて、トントンとテーブルを叩いた。恐る恐る右手を伸ばすと、キュっと指先で私の手を握ったと思ったら大雅君は両手で私の手を包み自分の頬に寄せた。

手をつかまれ、私の心臓が一瞬跳ね上がるがその切なそうな表情を見て、私も急に胸が苦しくり、泣きそうになる。絢ちゃんが戻る前に、手は離され絢ちゃんが戻るとすぐ、私はお化粧室へ立った。

お化粧室から戻ると、すでに会計は終わっていて絢は地下鉄だったよね、大雅君が言い、その場でまたね、と別れる。私はJRだが大雅君も確か地下鉄だ。JRの改札まで来ると、大雅君は立ち止まり、無言のまま何も言わない。
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