あなたの隣にいてもいいですか
「でもね、航生さん、普通にしてくれてるんだ。来週、金沢出張だから、週末合流しよう、って
誘ってくれて。行ってくるね」

「いいな、金沢。楽しんできてね」

「雑誌、金沢から戻ったらでいい?お土産も買ってくるから」

「OK。りえにも言っておくね」

大雅君、メールでもすむのにわざわざ電話くれたんだ。りえちゃんから話聞いて、心配してくれてるんだよね。

会ったらちゃんとお礼を言おう。

両親には金沢には出張だと言って出る。土日だけど、不審に思う様子もなく、送りだしてくれる。

行きは新幹線で帰りは飛行機だ。初の北陸新幹線。しかも一人旅だ。景色が想像以上に綺麗でびっくりする。嫌なこと忘れてウキウキしてくる。こんな素敵な景色を一人で見るなんて、なんだかもったいない。

航生さんと駅で待合せて早速北陸新幹線の感想を伝えると、航生さんも今回初めて乗ったらしい。職場の先輩と一緒だったとのことで、茉実と一緒がよかったな、と言ってくれた。

何だか、久しぶりだ。少しの間、航生さんと一緒にいるときも、どこか気持ちがささくれ立っていて、落ち着かなかった。
今日の航生さんは表情も、口調もとても穏やかだ。私の荷物をさっと持ってくれたり、とても優しい。

市内から少し離れたホテルを予約していて、電車で向かう。おいしいお店もあらかじめリサーチしてくれてて航生さんが何もかもエスコートしてれる。

ご両親に反対されていること忘れそうなくらい、幸せな気持ちになる。

もしかしたら、今回の旅行は航生さんのお詫びの気持ちが入っているのかもしれない。それでも、航生さんの優しさに、私は救われた。

東京に戻り、仕事も忙しい日々を過ごしながら航生さんとの付き合いも相変わらずだ。ご両親とはたまに話している様子だが、私に報告するような進捗はないのだろう。

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