あなたの隣にいてもいいですか
夜の22時。仕事のキリが悪く、いい加減切り上げないと終電がなくなるー、と焦りながら仕事をしていると、広報の石田さんが電気を消そうとしていたので

「あー、すみません、まだこっち残ってるので、セキュリティも電気もやりますから大丈夫です!」

少し大きめの声で言うと

「山崎さんか。ごめんね。ってか、まだやってるの?一人?」

「いえ、私の他にまだ2,3人残ってますよ」

「山崎さんはそろそろ上がりなよ。さすがにもう遅いよ」

そうだよね、さすがにもう帰らないと。まだ終わりそうにないが、ここは一旦区切って帰ることにしよう。

「ありがとうございます。じゃあ、もう私も帰ります」

「山崎さん、家どこ?俺、今日車だから送るよ」

「いえいえ、大丈夫です。ウチ遠いんで。お気持ちだけ。ありがとうございます」

「じゃあ、駅まででも行くよ。」

私の腕をつかんでずんずん進んでいく。

「ほんと、大丈夫です。いつも、本読むか、寝るかしてる間にすぐ着くので」

「家、どこだっけ?」

私の言葉を無視して、聞いてくるので仕方なく家の方面を言うと

「なんだよ。超近所じゃん。送ってく」

「奥様とお子様たち、待ってるんじゃないですか?少しでも早く帰った方がいいと思いますよ。」

「だから超近所だって言ってるじゃん。さすがに子供はもう寝てるよ。奥さんも子供と一緒に寝てるんじゃないかな。っていうか寝てろっているも言ってるんだ」

石田さんの奥様は確か二人目を妊娠中で2歳の男の子が動き回って大変だって前に言っていた。

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