闇色のシンデレラ
「みの、り?」

「ああ、相川実莉っていう子。そういえば壱華ちゃんと名字が一緒だけど、もしかして親戚だったりする?」




目の前が真っ暗になる。


光冴の大切な人は、わたしの全てを奪い尽くしてきた人間だった。



「……壱華ちゃん?」

「その子は、わたしのこと、知ってるの?」

「いや、通ってるバーに気の合いそうな子がいるよ、とは言ったけど」

「ごめん光冴、わたし、その子と友達になれない」

「は?」

「ちょっと着替えてくる」



また、奪われる。


ヒリヒリ痛む頬に熱を感じながら、見えない恐怖に怯えていた。


結局その日は、オーナーが帰って来てから裏で掃除やデスクワークをこなしていて、光冴と口をきくことはなかった。
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