闇色のシンデレラ
ちょっと、欲張りなこと言っちゃったな。


これだけ尽くしてもらっているのに、まだ足りないだなんて。



「俺と、だろ?」

「え?」

「親父とおふくろみたいに、俺と添い遂げたいんだろ?」



ところが志勇は穏やかな表情で、もっと近くへとわたしを抱き寄せる。



「なりたいじゃなくてなるんだ。俺が保証してやる。
10年後も20年後も、俺の隣は永遠にお前だけだ」




彼のその言葉は、魔法のように、奥深くにからまっていた(かせ)を外した。


保証された永遠がほしい。


あの家族に縛られて、無理だと諦めていたこの願い。


それを言葉にしてくれたから嬉しくて、心があたたかくて、この人に応えてあげたくて。



「志勇」

「ん?……っ!」



声もなく、ぎこちない笑みを贈った。


笑うことを恐れ、笑うことができなかったわたしがつくる、精一杯の笑顔。



「壱華っ……」

「んんっ!」



一瞬驚いた表情を見せて素早くたぐり寄せる志勇。


そして荒々しく、わたしの唇を塞いだ。



「壱華」



何度も、何度もわたしを呼んではキスを重ねる。


触れたところが熱くて、とけてしまいそう。


じんわりと伝わる体温が、心安まることを覚えさせてくれる。



「壱華」



幸せ、どうしようこの気持ち。


好きが溢れて、苦しい。


想いが満たされて、嬉しい。



……大好き。
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