闇色のシンデレラ
そこでふと兄貴を見ると、極寒の眼差しが突き刺さる。


そんな目で見んなよ。あんたは俺を睨み殺す気か。



「……颯馬さん?」

「やっほー。何、どうしたの。痴話喧嘩なんて珍しい」

「黙れ」




壱華ちゃんが俺に気がついたところで近づいてみたけど、兄貴の低い声に足を止める。




「あ、そうだ」



すると、壱華ちゃんが閃いたって顔で質問を繰り出した。



「あの、颯馬さんも大学行かれてるんですか?」

「ん、ああ、行ってるよ」

「ちなみにどこの大学で?」

「え?兄貴と同じ東計(とうけい)大」

「東計大!?あの名門の!?」



名門、なのかなぁ。


俺は兄貴が行ってるから、護衛の意味も含めて大学に進むことにしただけだけど。文系だからさほど難しくはないんじゃない?


兄貴は経済学部で俺は法学部。


この道は頭もいるからねー。それ相応の知識と学力は備えなきゃいけない。


最近のヤクザは資金調達のために投資もやったりするし。


ま、自分で言うのはおかしいが、エリートヤクザってヤツだな。




「……ねえ、ほら」

「は?」

「なんで颯馬さんも大学行ってるのにわたしはだめなの?」

「いきなり過ぎるんだよ。どういう風の吹き回しで大学なんて考えついたんだ。
そういうのはまず高卒試験に受かってから言え」

「いきなりじゃない。ずっと前から考えてたの。
今まで言えなかっただけなのに、そんな言い方しないでよ」



なんて呑気な俺に変わり、険悪なムードになりつつある2人。


ああ、この雰囲気は面倒くさい。
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