闇色のシンデレラ
「よう、クソ女」

「え……ぐっ!」



状況も把握できないまま、光冴の拳が顔に向かって放たれる。


身体ごと飛ばされ、硬くて冷たい打ちっぱなしのコンクリートの上に投げ出された。


地面に血が散る。貧血で頭がくらくらする。




「実莉の名前を出したとき、挙動不審だった理由がよく分かったよ。
そりゃ、あんなこと仕出かしたんならなぁ」

「がはっ!」



投げ出されたのも束の間、今度は腹部を強く蹴られる。


手加減のない強さに、息が止まった。


生理的に流れた涙で視界がかすむ。


久しく感じていなかった痛みに意識が遠くなる。



「あ、う……」

「騙されたよ。まさかお前が……」



しかし頭を掴まれ体を起こされたことで、強制的に意識が戻った。


かすむ視界に入ってきた男の顔は、間違いなく光冴だった。


……なんで、光冴がわたしを殴るの?




「お前が、2年前、男使って実莉をレイプさせた犯人だったとはな」

「は……?」



何の話?何が起こってるの?



「とぼけんじゃねえよ。てめえが実莉を傷つけたんだろうが!」

「ぐぅっ……」



混乱するわたしに構うことなく、光冴は首を絞め上げてきた。


息が、息ができない。痛い、苦しい。


殺されてしまう。


本能が察知し、必死の抵抗を始めたときだった。




「やめろ、光冴」



やけに落ち着いた声が、首を絞めていた光冴の手を緩ませた。
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